私は看護師としてのキャリアを大学病院の化学療法室でスタートしました。美容医療の道へ進んだ後も、化学療法室での経験を決して忘れることはありません。
癌の告知を受けた後、現在のステージ、病態進行の予測、治療の選択(手術・抗がん剤治療・放射線治療)、治療による副作用、再発の可能性など、多くの情報が医師より説明されます。
現状を理解し受け入れる段階に達していない状態で、治療方針や家族への伝え方など多くを考え選択し、あっという間に闘病生活が始まると、がん患者さん達は口を揃えます。
抗がん剤治療の有名な副作用のひとつに脱毛があります。
頭髪の脱毛が一番に浮かぶと思いますが、全身の毛が脱毛するため眉毛も脱毛します。以前勤務していた化学療法室ではパンフレットやウィッグの展示を行っていたため、頭髪の脱毛に対するアプローチは比較的スムーズでした。ところが、眉毛の脱毛についてはどうでしょう。
化学療法室に通っている患者様に対し副作用で眉毛が脱毛した後、私は眉メイクの提案をしておりました。当時からアートメイクの存在は知っていましたが、私の頭には全く浮かびませんでした。
抗がん剤治療によるリスクを考慮し、ご自身の眉毛が生えている状態でアートメイクを施す方が、ご本人様にとって違和感のない仕上がりになると思います。そのため、できることなら「抗がん剤治療前のアートメイク」が望ましいと私は考えます。このことを、闘病生活を送っている患者様、そのご家族やご友人、病棟や外来で働く医師・看護師・携わる医療従事者の方々に広めていきたいと考えています。
お客様の笑顔や嬉しいお言葉をいただいていく中で、一人の人間としての在り方について考えるようになりました。私の答えは、「困難があっても思いやりの心を持ち続け、しなやかで強い人間であること」です。
お相手の立場に立ち、感情を共有し、受け入れ、寄り添うことができる人間でありたいと思っています。
思いやりと優しさの誇りを胸に共感し支えてくれる仲間たちと、2022年4月にプロジェクトを始動。アートメイクを受けてくださった闘病中のお客様より、素敵なお言葉をいただきました。「川畑さんのアートメイクが入院中のお守りになりました」私の生涯ずっと心に残る大切な宝物となりました。
これから病と闘う中で、少しでも心が和らぎ前向きになるための選択肢の一つにアートメイクがある。皆様にアピアランスケアの可能性を知っていただき、その一助となれば幸いです。